「見送るさくら」吉田穂積

2023.7 撮影
タイトル見送るさくら
作者吉田穂積
設置場所東京都葛飾区 京成電鉄柴又駅前
製作年2017
初出1968 テレビドラマ「男はつらいよ」(フジテレビ)

この像は、映画「男はつらいよ」の主人公である車寅次郎の妹・さくらの肖像である。

「男はつらいよ」は、1968年10月から翌年1969年3月まで、全26話が放送されたテレビシリーズから始まった。主人公の車寅次郎は映画版と同じく渥美清が演じたが、さくら役は長山藍子が務めた。なお、テレビ版では山田洋次は第1作ほか何本かの脚本のみ担当で、小林俊一が全話を演出した。テレビ版は、第1話と最終話しか現存していない。テレビ版では、寅次郎が奄美大島でハブに噛まれて死んでしまうラストだったが、ファンの要望で続編が映画化された。

映画「男はつらいよ」の第1作は1969年8月27日に公開。寅次郎の腹違いの妹で準主役とも言えるさくら役は、2019年の第50作まで、一貫して倍賞千恵子が演じた。ここ柴又にあるさくら像も、倍賞の肖像である。

さくらは、いわばこちら側の代表である。渡世人の世界に行ってしまった兄の突然の来訪や破天荒な行動に振り回されながらも、兄を慕い、その幸せを心から願っている。しかし、上手くやれない兄は失敗を重ね、またしても柴又を去っていく。

このさくら像は観音様のような慈愛の表情をたたえている。寅次郎の像は1999年に建てられたが、さくら像は2017年に後れて設置された。寅次郎は一種の稀人であり価値観の破壊者でもあった。その寅次郎をいつ何時も決して裏切らないさくらの存在こそが、「男はつらいよ」を成立させるためな欠かすことができない鍵だったと思う。

吉田穂積は1949年生まれの彫刻家。東京造形大学卒業。1991年にスカルプチャーハウスを設立。具象作品の製作を続けながら、都市の景観デザインなども手がける。寅次郎像もさくら像も、極めて精巧な写実だけではなく、人物の底から湧き昇るペーソスが伝わる味わい深い作品だと思う。

2023.7 撮影
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