
| タイトル | The Boundaries of the Limitless |
| 作者 | ジョセフ・コスース(Joseph Kosuth) |
| 🇺🇸アメリカ | |
| 設置場所 | 横浜市西区 クイーンズスクエア横浜ステーションコア |
| 製作年 | 1997 |
横浜のみなとみらい駅の地下の改札から長いエスカレーターが地上に向かっている。そのエスカレーターの脇に、この異様に巨大なモニュメントが聳えている。
ジョセフ・コスースは1945年生まれのアメリカを代表するコンセプチュアルアートの作家の一人。コスースは言葉を表現の手段にする作家。この「The Boundaries of the Limitless」で使われているのは、ドイツの詩人・劇作家フリードリッヒ・フォン・シラーの言葉。1795年の「人間の美的教育に関する書簡集」から採られた。モニュメントにはドイツ語の原文と和訳文が併記されている。和訳文は下記の通り。
樹々は成育することのない
無数の芽を生み、
根をはり、枝や葉を拡げて
固体と種の保存にはありあまるほどの
養分を吸収する。
樹々は、この溢れんばかりの過剰を
使うことも、享受することもなく自然に還すが、
動物はこの溢れる養分を、自由で
嬉々とした自らの運動に使用する。
このように自然は、その初源から生命の
無限の展開にむけての序曲を奏でている。
物質としての束縛を少しずつ断ちきり
やがて自らの姿を自由に変えていくのである。
当時のドイツは封建時代の末期で、小国が割拠する動乱の状況を呈していた。シラーは、ゲーテとの1000通を超える往復書簡を重ね、自由国家への道のりを模索した。そして、美しいものへの追求を教育の基本とする「美的教育」こそ新しい国家へつながる指針だと結論づけた。それらをまとめた「人間の美的教育についての書簡」の最終章である第27章にデンマーク王子への書簡としてこの文は登場する。
私がこの詩文を解釈するとすれば、「植物の無限の豊穣も、それを有り難く享受できる動物も、その境界を超えて自由の営みに向けて変化しようとする」ということか。18世紀末的な直截的な言い方にすれば「豊穣を生み出す農民もその上に立つ領主も共に自由に生きる国を目指す」ということかもしれない。
作品のタイトル「The Boundaries of the Limitless」は直訳すると「無限の境界」。余剰の種が豊かさを生み、享受する営みのなかに自由が生まれることで境界のない無限の可能性が広がる。などと一応は書いてみたが、実際に長いエスカレーターに乗っても数文字しか読めず、少し読めても何も解釈できない。ただ、その迫力に圧倒されるだけだった。詩文の解釈も自由だし、モニュメントの圧倒的な存在感を感じられただけでコスースの狙いは果たされているのかもしれない。



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