「母子遍路像」古川武治

2022.11 撮影
タイトル母子遍路像
作者古川武治
設置場所東京都東村山市 国立ハンセン病資料館
製作年1993

ハンセン病はかつて「らい病」と呼ばれ恐れられていた。エジプトでは紀元前2400年から、日本でも日本書紀かららい病の記載がある。病気の原因がわからなかったので、先祖からの因果応報による業病、天罰としての天刑病、あるいは遺伝病などとされた。末梢神経の麻痺を引き起こすため、手足の先端が変形したり、壊死したりする。それが、穢れ意識とも結びついた。

四国遍路はもともと真言宗の開祖・空海ゆかりの霊場を修行僧が巡ったことを起源とし、江戸時代になると一般の民衆も現世利益を求めて巡礼するようになった。怖しい病と忌まれたハンセン病患者たちはコミュニティも追われ、その因縁を断ち切るためにも四国巡礼に出る者が多かった。深い絶望の旅だっただろうと思う。この像では母と娘が支え合い、前を向いて進もうとする姿に胸が苦しくなる。

1873年に、ノルウェーのアルマウェル・ハンセン医師が、ハンセン病は「らい菌」による感染症だということを明らかにした。この事実が、さらに感染症としてのハンセン病に対する恐怖をあおり、ハンセン病患者を全国の療養所に閉じ込めることになる。そして、特効薬が開発されたにも関わらず長らく隔離を続けてしまったという国の大きな過ちを生んだ。

らい菌は、感染力が極めて弱く、栄養が足りている現在の日本では感染する可能性はほとんどない。たとえ感染しても良い薬があるので後遺症なく完治する。現在、療養所に暮らすのも、患者ではなく元患者=回復者の方々だ。しかし、今も多くの元患者は故郷に帰れない。なぜこんなことが起こったのか。ハンセン病資料館を巡り、改めて自らを問う。

古川武治は1918年、青森県生まれの彫刻家。日展参与。2004年に逝去。

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コメント

  1. 河内敏雄 より:

    全生園は住所は東村山です

    • publisann より:

      河合様

      ご指摘ありがとうございました。
      何度も行ったのですが、いつも清瀬からバスに乗るので間違えてしまいました。
      訂正します。

      全て一人でやっているので、ミスもあるかと思います。
      ご指摘ありがとうございました。

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