
タイトル | ピエール・ド・クーベルタン |
作者 | 湯川隆 |
設置場所 | 東京都新宿区 日本オリンピックミュージアム |
製作年 | 2019 |
ピエール・ド・クーベルタン男爵は近代オリンピックの父。
クーベルタンは1863年にフランスの貴族の4男として生をうける。フランスでは、1789年のフランス革命後に王制が途絶えると貴族に対する批判も高まり貴族は激減する。その後、ナポレオンによる帝政、ブルボン王朝の復興などを経てさらに貴族の立場は弱くなっていった。クーベルタンが生まれた1863年はナポレオンの第2帝政の時代。1870年にはナポレオンが失脚し第3共和制が始まる。1871年には、世界初の労働者による政権であるパリ・コミューンも生まれている。
当時のフランス貴族は、政治か軍事を目指すことがほとんどだったが、クーベルタンは教育の分野で国に貢献しようと考えた。
クーベルタンは、20歳でイギリスのパブリックスクールを視察した時、教育のなかでスポーツが重要な位置におかれていることに感動する。当時のフランスでは教育にスポーツはほとんど取り入れられていなかったという。フレデリック・ル・プレの実証主義や、歴史書の古代オリンピックの記述に影響を受けたクーベルタンは、オリンピック復興のアイディアを発想、提唱し、実現に向けて賛同者を募り、1896年のアテネオリンピックを実現する。その後もオリンピックの発展に人生を捧げたクーベルタンの心臓は、死後、遺言通り、オリンピック発祥の地であるギリシャのオランピアに埋葬された。
湯川隆は1961年生まれの彫刻家。多摩美術大学大学院修了。イタリアのカッラーラに留学する。湯川のクーベルタンは、軽やかで、それでいて芯の通った人物像が伝わる。湯川は、柔らかな木彫にその持ち味を持っているが、このクーベルタンにもその柔らかさが生きていると感じる。
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