「ヘクテルとアンドロマケ」ジョルジョ・デ・キリコ

2022.7 撮影
タイトルヘクテルとアンドロマケ(Ettore e Andromaca)
作者ジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico)
🇮🇹イタリア
設置場所大阪市中央区 御堂筋彫刻ストリート
製作年1973

ジョルジョ・デ・キリコは、「形而上絵画」を引っ提げてイタリア美術界に登場した。「形而上絵画」とは、古典的な絵画で重要とされた人物の表情や遠近法などを排する技法。顔や姿は、「マネキン」あるいは「無表情の彫刻」あるいは「不在」などになり、遠近法を歪め、背景にも無関係なものを配置する。形而上とは、目に見えない真理を追求すること。作品の具体的な表情や形を作家の側が規定するのではなく、鑑賞者の側がイメージして、作家と対話しながら芸術を完成するということではないか。彫刻作品でも同様で、この「ヘクテルとアンドロマケ」も顔がマネキンになっており、服装もシンプルだ。

デ・キリコはギリシャ神話「ヘクテルとアンドロマケ」を絵画作品としても多く取り上げている。この場面は夫のヘクテルがトロイア戦争に出征するところ。この戦争で、アンドロマケは夫ヘクトルをはじめ、親や兄弟、幼い子どもまで命を奪われ、自分は仇の一族に隷属することになる。この後悲劇に見舞われる2人の、それを予感しながら寄り添う様子が、単純化された造形からビビッドに伝わってくる。

デ・キリコは1888年生まれ。1978年に没している。この御堂筋の作品は、第一次大戦、第二次大戦を経験したデ・キリコの老境の傑作。戦争へのデ・キリコの思いも込められているのではないかと思う。デ・キリコは若い頃形而上絵画を多作した後、作風を変え古典に回帰し、晩年は全て混ぜこぜの自由な作風を選んだ。この「ヘクテルとアンドロマケ」は、形而上絵画の特徴を備えている。

この御堂筋の銘板では「ジョルジオ・デ・キリコ」と記載されているが、名前に揺れがあり、このサイトでは「ジョルジョ・デ・キリコ」とする。

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